太陽光パネルの廃棄って費用はいくらかかるの?

太陽光発電は、日本でも最も普及している再生可能エネルギーです。
2020年10月の太陽光発電協会(JPEA)の発表によると、住宅用太陽光発電の普及率は、約9%。2012年の固定価格買取制度(FIT)導入以降、右肩上がりに増えてきました。
しかし、クリーンなエネルギーを生み出す太陽光パネルの製品寿命は、およそ25~30年と言われています。そのため2012年のFITをキッカケに導入された太陽光発電事業は、2040年頃を目途に終了し、太陽光発電設備からモジュール(太陽光パネル)を含む廃棄物が出ることが予見されています。
太陽光発電設備の導入を検討する際には、こうした「廃棄する時のこと」を考えなければなりません。
そこで今回は、太陽光パネルの廃棄について、費用などの気になる情報をまとめていきます。
今、太陽光パネルを導入している人も、これから導入を検討する人も、必見の内容です!

太陽光パネルを処分する時は「産業廃棄物」

私たちに最も身近な太陽光発電設備は、住宅の屋根に設置されている太陽光パネルでしょう。
実は、この太陽光パネルを何らかの原因で撤去し、処理する際は「産業廃棄物」として扱われます。
太陽光発電設備は、主に下記4つで構成されています。

・太陽光パネル(太陽電池モジュール)
・パワーコンディショナー
・接続箱
・変電設備 など

この中でも「太陽光パネル(太陽電池モジュール)」は、鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が含まれていることがあります。さらに、撤去や廃棄には専門的な知識や技術が必要です。そのため、一般家庭の屋根に設置されているものであっても、基本的には専門業者によって撤去作業が行われ、産業廃棄物として処理されます。
この時、太陽光パネルの性質上、産業廃棄物の種類としては「金属くず」「ガラス・コンクリート・陶磁器くず」「廃プラスチック類」の混合物に分類されます。
さらに、産業廃棄物は「廃棄物処理法」という法律において、排出者が責任をもって適切に処理しなければならないと定められています。
太陽光パネルの場合、処分方法や廃棄方法によっては排出責任者が変化するため、注意が必要となります。

太陽光パネルを廃棄するパターン3つ

太陽光パネルの廃棄方法は、大きく3つのパターンがあります。
この方法によって、排出責任者や廃棄物の扱いが異なってくるため、廃棄の前には必ずチェックしておく必要があります。
ここでは、太陽光パネルの撤去ケース別に、廃棄方法について説明していきます。

太陽光発電の不具合・故障・寿命で取り替える場合

太陽光発電のシステム自体に不具合が発生したり、故障してしまったため、設備を撤去して発電システムの交換をするケースです。
太陽光パネルの不具合そのものが原因である場合、排出責任者は太陽光発電システムのメーカーとなり、設備撤去を行うのが基本です。
それ以外の設置方法による不具合や、不具合などはないが、太陽光パネルが寿命を迎えてしまった場合は、太陽光発電システムを設置した施工会社、または販売会社が排出責任者となります。
こうした要因の特定は、とても素人にできることではありません。そのため太陽光発電設備を撤去したい場合は、基本的には設置を担当した施工会社、または販売会社に連絡し、原因を特定してもらいましょう。
また、撤去を担当する側は、その太陽光パネルがどうして撤去・廃棄されるのかを正しく確認し、排出責任者は誰であるかを認識しなければなりません。

家の建て替えやリフォームで処分する場合

太陽光パネルや発電設備に不具合はなくても、家そのものの建て替えをしたり、取り壊しをするケースがあります。その場合は、家の解体を担当する業者が排出責任者となります。
そのため、太陽光パネルを導入している家のリフォームを検討している人は、事前に解体業者へ太陽光パネルの解体も可能かどうかをチェックしておきましょう。
解体業者側も、撤去した太陽光パネルの処分方法や、中間処理業者についてなど、事前に確認しておく必要があります。

災害や事故により太陽光パネルが破損した場合

地震などの災害や、事故などによって太陽光パネルが破損した場合も、撤去・廃棄が必要となります。しかし、災害や事故に遭ったケースは、状況によって太陽光パネルの扱いが大きく異なるため、注意しなければなりません。

太陽光パネルが設置されている状態で破損したケース

この場合は、通常、故障してしまったケースと同様、施工会社や販売会社が撤去・廃棄する流れとなります。

事故・災害により、太陽光パネルが地上に落下したケース

このケースの場合は、太陽光パネルの所持者、つまりその家の家主が排出責任者となるのです。

しかし、落下した太陽光パネルは「産業廃棄物」ではなく「災害廃棄物」に区分されます。「災害廃棄物」は「一般廃棄物」として扱われることになります。
一般廃棄物は、専門の業者ではなく、市区町村などの自治体が処理責任を負うことになっています。そのため、太陽光パネルの所有者は、まず市区町村の担当窓口に相談してみましょう。
冒頭でも説明した通り、太陽光パネルには鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が含まれていることがあるため、粗大ごみなどで処分することはできません。
また、撤去作業も高所作業となるだけでなく、電気遮断などの処理には専門スキルが必要になります。素人で対応できるものではないため、専門の業者か、自治体に任せましょう

太陽光パネルの廃棄費用の相場はいくら?

太陽光パネルを廃棄する際には、施工会社や販売会社、あるいはメーカーに依頼する必要があるということをご紹介してきました。
そこで一番気になるのは、「廃棄にどれくらいの金額がかかるか」ということではないでしょうか。
ここでは、太陽光パネルの廃棄費用の相場を、項目別で説明していきます。

パネルの取り外しと屋根の修復にかかる費用

太陽光パネルを屋根から下ろすには、以下の3つの費用がかかります。

・作業費
・人件費
・足場代

この項目別に、相場をご紹介していきます。

▪ 作業費、人件費

作業費とは、「パネルを屋根から取り外し、地上に下ろす」費用です。
人件費と込みで、およそ10万円が相場の目安となります。

▪ 足場代

足場代の相場は1㎡あたり700円~1000円となっています。
30坪の2階建ての家のケースだと、15~20万円ほどが相場となります。

これらを組み合わせると、最低でも20万円以上、ケースによっては30万円前後になることもあります。一般的には、設置時と同等の費用がかかるとされています。
また、太陽光パネルを置いていた屋根は、撤去時に何らかの問題が生じたり、雨漏りなどが発生してしまうケースもあります。何かあった時のため、屋根の修繕費用もプラスで見積もっていた方がよいでしょう。
屋根の修繕は、部分的なものであっても数万円~30万円ほど、痛みがひどく、葺き替えすることになれば、100万円前後まで費用が膨れることもあります。

パネルの処分と運搬にかかる費用

パネルの取り外しの他にかかる費用としては、以下の2種類が挙げられます。

・太陽光パネルの処分費
・運搬費

それぞれの費用面について、解説していきます。

▪ 太陽光パネルの処分費

例えば、太陽光パネルの回収・再資源化サービスを行っている専門業者に依頼すると仮定しましょう。
単結晶ソーラーパネルの重さが18kg以下の場合、1枚当たりの処分費用は1,200円程度が相場です。このため、処分したい太陽光パネルが10枚の場合は、1万2,000円かかる計算になります。

▪ 運搬費

運搬費に関しては、処分する施設までの距離や、運搬に使う車の大きさや車種によって価格が変動します。見積もり時にはしっかりと確認しましょう。

太陽光パネル廃棄等費用の積立義務化

太陽光パネルのメーカーにおいても、有害物質を基準値以上に使用しない工夫がなされています。有害物質の含有量は各主要メーカーのホームページなどでも公開されており、JPEA(太陽光発電協会)のホームページ「情報提供ガイドライン賛同者一覧表」でも確認することができます。
しかし、こうした努力があっても、太陽光パネルが不当に処理されているのか? という心配は尽きません。
2012年よりスタートした固定価格買取制度(FIT制度)により、一気に普及した太陽光発電ですが、その一部は、寿命ではなく故障やリプレイスによって廃棄されていることが分かっています。
そこで2022年7月より、10kW以下の太陽光発電事業者に対して、太陽光発電設備が使用済みになった際の廃棄等費用の積み立てが義務化されました。
自然エネルギー庁の資料によると、対象となるのは「FIT・FIP制度を導入している10kW以上の太陽光発電設備すべて」です。
廃棄費用の積立制度は、もともと任意で行われていたものです。しかし、2019年に国が調査した結果によると、実際に廃棄費用を積み立てていた発電事業者は16%たらずであることが分かりました。
こうした背景を受けて、不法投棄などを防ぎ、発電設備が適切に廃棄されることを目指し、この制度が義務化されるに至ったのです。
積立てを怠った事業者には、国からの指導、改善命令、認定取消し措置の対象になり得るなど、厳しい処罰が下ります。

太陽光電池はリユース(売却)できる?

SDGsなどが推進されている今、「リサイクル・リユース」という考え方は、非常に一般的なものになりました。太陽光パネルに関しても、それは変わりません。
平成12年に定められた「循環型社会形成推進基本法」という法律により、廃棄物などの発生抑制やリサイクルが促進されています。
太陽光パネルにも、廃棄以外に処理方法が存在しています。有害物質を含むため、適切な処理が必要となりますが、ここではリユース(リサイクル)、売却について解説していきます。

▪ リサイクル

まずは、太陽光パネルの部品について解説していきます。太陽光パネルは、大きく分けて4つの部品に分けられます。

・フレーム

…パネルを囲む、四方の枠です。一般的にアルミ合金製のケースが多いです。

・ネジ

…フレームを組付ける際に必要なネジです。ステンレス製であることが一般的です。

・ケーブル

…発電した電気を供給するための配線です。コネクターが付いています。

・ラミネート部

…太陽光パネルの発電するメインの部分となります。

このうちフレーム、ネジ、ケーブルは一般的な金属片として簡単にリサイクルできます。しかし、問題はラミネート部分です。
パネル表面のガラスは、再利用処理が可能ですが、セルなどをはがす手間があり、専門の機械でないと有害物質が飛び散るなどの危険性があります。
しかし、裏を返せば、専門的な技術を用いた業者の手にかかれば、安全にリサイクルすることが可能です。

▪ 売却

太陽光パネルに関しては、売却することも可能です。
新品や中古、故障品のフルセットだけでなく、パワーコンディショナーや架台、電子装置、ケーブルなど、部品のみでも買い取る業者も存在しているようです。
環境庁も、リサイクルやリユースを推奨しているため、太陽光パネルの処分の際は、廃棄だけでなく、買取も視野に入れてみると良いでしょう。

まとめ

環境や自然に優しい、クリーンなエネルギーを生み出す太陽光発電。
未来の地球のためと導入したとしても、廃棄費用の不足による不法投棄などが起こってしまえば、ますます自然へ深刻なダメージを残してしまいます。
しかし、今回の積立制度のスタートにより、その心配が少しずつ解消されていくことになるでしょう。
現代ではやや高コストな廃棄費用も、積立制度の導入により、少しずつ下がっていくと見込まれています。
太陽光発電の導入をする際は、廃棄することも考えながら、最新の動向に目を配りましょう。

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