一生ローン?電気代の本当の話

家計の支出の管理などの際、毎月の検針票を見て、電気代の高さに驚いたことがある人も多いのではないでしょうか。特にここ数年、大手電力会社による電気代の値上がりが止まらず、2022年5月現在も過去最高額を更新し続けています。
実は、電気代は「一生払い続けなければならない」という観点から「生涯ローン」とも呼ばれ、終わらないローンのようなものだと言われています。
今回は、そんな電気にまつわる様々なデータを紹介していきながら、「電気代の本当の話」をしていきます。

電気代について

「エネチェンジ」によるインターネットアンケートによると、コロナ禍で最も出費が増えた出費と、最も節約したい出費は「水道光熱費」が堂々の1位となっています。
どんなことにも言えますが、節約を目指すのであれば、まずは現状を知ることが近道。ここでは、「電気代の“今”」についてしっかりと知っていきましょう。

家族人数別平均電気代(月間・年間)

電気代は、家族の人数によって大きく変動します。
総務省統計局の家計調査によると、一人暮らしの平均電気代は月額5,791円、年間6万660円。
二人暮らしの場合は、月額9,515円、年間11万4,180円。 三人暮らしの場合は、月額1万932円、年間13万1,184円。
四人暮らしの場合は、月額1万1,788円、年間14万1,456円という結果が出ています。
一人暮らしから二人暮らしになる場合、電気代はおおよそ倍になりますが、子どもが誕生するなどして三人暮らしになって以降は、電気代の上がり幅は減少していく傾向にあります。
とはいえ、電気代が年々上昇している今、全世帯の平均電気代も上がっていることでしょう。

年々高騰している電気代

大手電力会社の電気料金の推移をみると、11カ月連続で値上げするなど、価格の高騰は収まる気配を見せません。
その要因の一つとなるのが、2011年に起きた東日本大震災です。
この災害をきっかけに、日本の原子力発電所は一部を除きほとんどが停止しています。それ以降、電力の不足を補うため、火力発電や再生可能エネルギーによる発電量が急速に増えていきました。
しかし、火力発電や再エネによる発電が増えたことにより、さらに電気代が上がり続けているという現状もあります。

1年間で2,400円アップ(東京電力)

東京電力の場合、電気代はここ一年で約2,400円上昇しています。(電気使用量360kWhと仮定した場合)過去五年間での最高水準を更新し続けており、家計を大きく圧迫しています。
ここでは、値上がりに関係のある、電気料金の制度そのものについて解説していきます。

毎年5月に値上がりしている?

最近では2~3か月おきに値上がりが発表されていますが、実は毎年5月に必ず値上げの発表があるのはご存じでしょうか。
これは、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という料金項目の単価が、毎年5月~翌年4月にかけて変動するためです。
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、太陽光発電の普及に向けて、電気の買取にかかる資金を消費者から集めるお金です。再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価は、2030年頃まで上がり続け、高騰が続くとされています。

電気代の内訳

電気代の内訳には4つの項目があり、「基本料金」、「電力量料金」、「燃料費調整額」、「再エネ賦課金」となっています。
「基本料金」は、電気の使用量に関わらず、契約プランや利用可能なアンペア数によって支払う固定の料金です。この金額は、たとえ電気を一度も利用していなくても支払わなければなりません。
続いて「電力量料金」は、電気を使った分だけ発生する料金です。多くの電力会社では、単価は利用した電力の量が多ければ多いほど増える、「三段階制」を採用しています。
「燃料費調整額」は、発電するのに必要な石油や石炭の価格変動を、速やかに料金に反映させるための調整額です。
燃料の価格が上がると追加で徴収され、価格が下がると減額されるようになっています。
そして「再エネ賦課金」は、前述の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の略語です。2014年には0.75円だった再エネ賦課金の単価が、2022年5月には3.45円まで値上がりしました。

電気代高騰の理由

ここまで電気代が高騰しているのには、再エネ賦課金の値上げ以外にも理由があります。
一つは、新型コロナウイルスの流行による電力消費量の増加です。
外出自粛や在宅ワークなどの影響で、家にいる機会が増え、全体の電気使用量が増えたため、電力そのものに対するニーズが増えたのが一因と言えます。
二つ目は、東日本大震災以降の原子力発電所の停止が挙げられるでしょう。
今、日本のほとんどの電子力発電所が停止しており、その分を火力発電で賄っています。そのため、火力発電に必要な燃料の購入量が増えているのです。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻などの情勢変化が、価格高騰に拍車をかけています。火力発電に用いられる化石燃料は、日本ではほぼ輸入に頼っているのが現状です。そのため、情勢変化による燃料の価格高騰を受け、火力発電のコストもあがっているというわけです。

生涯払い続ける電気代の総額

前述の家族人数ごとの平均電気代から計算すると、20歳から5年一人暮らしをして、それ以降夫婦二人で80歳まで生活する場合、電気代の総額はいくらになるでしょうか。
計算してみた結果、約658万円という数字が出ました。子どもが生まれる場合は、さらに加算されます。加えて、今後電気代の値上がりがまだまだ続くと考えると、実際に払う金額はさらに膨れ上がりそうです。
電気は、既に私たちの暮らしには欠かせないライフラインです。そのため、「ただ生きているだけでこれだけの金額を払うことになる」と言っても過言ではありません。

電気代の高騰に向けての対策

電気代の高騰に向けて、私たちができることはなんでしょうか。
ここでは短期的に行う対策と、長期的に行う対策についてそれぞれご紹介していきます。

節電方法

電気代の節約と言えば、パッと思いつくのが節電です。
節電と言えば、電気をこまめにオフにしたり、使っていないコンセントを抜くなどが思い浮かぶ方も多いかもしれません。
その他には、家電製品を省エネ家電に変えるという方法もあります。
例えばエアコンは、10年前の製品よりも最新型の製品の方が、一度に使う電気代を安く抑えられることがほとんどです。古く、寿命が近い家電製品については、買い替えることで将来的な節電になると言えます。
また、料金プランを見直すことで、電気代が驚くほど変わるケースもあります。
こういった対策はもちろん有効ではありますが、将来的に電気代を支払い続けることに変わりはありません。

家を発電所にする(太陽光蓄電池の設置)

将来的に電気代を払わなくする唯一の方法は、太陽光発電を導入することです。
太陽光発電は、特殊な素材に光が当たると電気が発生することを利用した発電方法です。
太陽光発電でクリーンなエネルギーを発電できるのはもちろん、蓄電池を一緒に設置すれば、昼間に発電した電気を貯めておいて夜使うことも可能。
このように「完全に自家発電するサイクル」を実現してしまえば、電力会社の電気に頼ることもないため、電気代を払う必要もなくなります。
また、近年ではゼロエネルギー住宅なども登場し、新築物件の中には太陽光発電と蓄電池が標準でついているものも少なくありません。
太陽光パネルや蓄電池は、導入する際に初期費用がかかりますが、同時に自治体などから補助金が出るケースもあります。こういった制度をうまく活用すれば、費用の回収も比較的容易に目指せるでしょう。
「電気を買う」時代は、もうすぐ終わりを迎え、「電気を自分たちで生み出す」ことが、新しい時代のスタンダードになるかもしれません。

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