日本の温室効果ガス排出量が7年連続で削減出来た要因

世界的な気候危機の原因のひとつは、温室効果ガスと言われています。
温室効果ガスとは、二酸化炭素(CO2)をはじめとしたガスのことです。
全国地球温暖化防止活動推進センターの調査によると(※1)、2019年における日本の二酸化炭素排出量は、世界中の排出量の3.2%を占めています。
しかし、2022年4月15日、環境庁は日本の二酸化炭素排出量の確定値を公表し、7年連続で減少したと発表しました。(※2)
この記事では、日本の温室効果ガスが減少した理由や、その背景について詳しく解説していきます。
※1…参照:世界の二酸化炭素排出量(2019年)
※2…参照:2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について

温室効果ガス排出量7年連続で削減

環境庁の発表した資料(※)によると、2020年度の温室効果ガスの排出量(CO2換算)は、前年比の5.1%減となる11億5000万トンとなりました。これは、統計を取り始めた1990年以降で、最も少ない数字です。
森林等の吸収源対策による吸収量は4,450万トン、それを差し引いた実質排出量は11億600万トンでした。
また、2013年度の総排出量の14億900万トンに比べ、18.4%の減少を達成しています。

(画像:2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)についてより)
これにより、温室効果ガスは2014年以降7年連続の減少となり、2018年度から3年連続歴代最小値を更新しています。 ここからは、7年連続で温室効果ガスが減少した理由について解説していきます。

再生可能エネルギーの導入拡大

2020年度の発電電力量における再生可能エネルギー(水力発電含む)の割合は、19.8%。前年度から1.6ポイント増加する結果となりました。
再生可能エネルギー導入のコストは、技術革新などにより年々低下しており、これが普及の要因の一端となっています。
今後も東京都が新築住宅に太陽光発電設備の設置を義務化することが検討するなど、ますます再生可能エネルギー導入拡大は加速していくことでしょう。

省エネ家電などの進展

省エネ家電は、「トップランナー制度」などにより、年々省エネ性能が向上しています。
トップランナ―制度とは、まず現在発売されている商品の中で、最もエネルギー消費効率に優れているもの(トップランナー)を選びます。そして、性能向上における事業者の判断基準を、先ほど選んだトップランナーに設定し、それを超えるエネルギー消費効率の製品を開発するというものです。
そのため、10年前と比べると各家電の省エネ性能は格段に向上しています。
また、自治体によっては省エネ家電への買い替えに対して補助金を出すなど、省エネ家電の普及にも尽力しています。

新型コロナウイルス流行拡大による影響

2020年4月には、新型コロナウイルス感染拡大により、緊急事態宣言が出されました。その後も、新しい生活様式の定着により、社会全体のあり方が変化しています。

・製造業の生産量の減少

経済産業省のエネルギー白書によると(※3)、製造業ではすべての分野でエネルギー消費量が減少、つまり生産量が減少したというデータが出ています。
特に顕著だったのは、製造業全体のエネルギー消費の約25%を占める鉄鋼分野で、およそ15%も減少しています。この背景には、自動車の生産量の減少や、建設工事の工期の延長などがあり、高性能鉄板などのニーズそのものが減少したことが考えられます。
一方、紙パルプ分野では約10%のエネルギー消費量減少でした。これは急速なテレワークの普及により、ペーパーレス化が進んだことや、イベント中止による紙需要の低下などが原因であるという見解が出されています。

・旅客及び貨物輸送量の減少

新型コロナウイルスの拡大により、海外からの出入国者も厳しく制限を受けました。また、国内旅行も自粛の傾向が強く、航空燃料の需要が著しく減少したということです。
経済産業省のエネルギー白書のデータでは、旅客部門では最終エネルギー消費が前年比で約15%減少、貨物は5%減少という結果が出ています。
※3…参照:新型コロナウイルス感染症はエネルギーにどう影響した?―「エネルギー白書2022」から②

温室効果ガス排出量が増えるとどうなるの?

温室効果ガスとは、大気中に含まれている二酸化炭素などのガスの総称のことです。この温室効果ガスには、通常赤外放射される太陽からの赤外線を吸収し、再び放出してしまうという性質を持ちます。
この温室効果ガスが増えると、地球環境にさまざまな悪影響があるため、今、世界中の国々が一丸となって温室効果ガスの削減に取り組んでいます。
ここでは、実際に温室効果ガスが増えるとどのような影響があるのかを解説します。

地球全体の気温が上昇する

温室効果ガスが増えた結果、太陽からの光で暖められた地球の表面から、地球の外に放射される赤外線の多くが熱として大気に蓄積され、再び地球の表面に戻ってきます。この戻ってきた赤外線によって、地球の表面付近の大気は暖められるのです。 これにより、世界の年平均気温は変動を繰り返しながら上昇しており、100年あたり0.73度の割合で上昇しています。
近年、日本でも真夏日や酷暑日が増加しているのも、この影響によるものです。

海面が上昇する

前述のとおり、温室効果ガスが増えると気温が上昇します。それにより、海水の温度上昇による膨張が起こり、氷河や氷床の融解が進むのです。
全国地球温暖化防止活動推進センターによると(※4)、1901年~2010年の間に19cm海面が上昇したとされています。このまま海面の上昇が進むと、21世紀中に最大82cm上昇すると予測されているのです。
日本においては、海面が1メートル上昇することで9割以上の砂浜が失われるという予測データがあります。東京においても、堤防をより高くするなどの対策を取らない場合、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が浸水などの影響を受けるのです。 既にフィジー諸島共和国などの諸外国では、高潮になると住宅や道路が浸水するなどの被害に見舞われています。
※4…参照:全国地球温暖化防止活動推進センター「1-6 海面上昇の影響について」

異常気象が発生しやすくなる

地球の平均気温が上昇すると、その分海や川などから蒸発する水分が増え、空気中の水蒸気の量が増えます。例えば、気温が1度上がると水蒸気は約7%増えるとされているのです。
こうして空気中の水分が増えると、その分豪雨などの異常気象が発生しやすくなります。
日本でも毎年のように各地で豪雨が発生したり、2020年には東日本の日本海地域で深刻な日照不足なども報告さ
れています。こうした異常気象により、田畑が流されるなどの被害が相次ぎ、安定的な農作物の出荷などが難しくなっているのです。

生態系に影響を及ぼす

気温上昇や異常気象により、影響を受けるのは人間だけではありません。動物や植物、海や河川の生き物などにも大きく影響を及ぼします。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、陸上生態系では産業革命前より1.5度の気温上昇で、最大14%の種が非常に高い絶滅リスクに直面すると発表されました。2度の上昇では18%、3度で29%、5度で48%と、気温の上昇と共に割合は増えていきます。
また、海水温の上昇により、サンゴが白化するなどの現象も報告されています。海の生き物の1/4~1/3はサンゴを棲み家にしていると言われているため、サンゴが減少すると小魚やサンゴに産卵する種も一緒に激減するとされているのです。

温室効果ガス排出量の家庭部門はなぜ増加したの?

2020年度のCO2排出量の特徴は、前述のとおり産業部門や運輸部門が新型コロナの影響で大幅に下がったことです。一方、家庭部門は1億6600万トンと、前年比4.5%の増加となりました。
これもやはり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響とされています。
省エネ家電の普及や、節電意識の拡がりを受け、2017年以降、家庭部門の電力消費量は大幅に下がっていました。にも関わらず、これほど消費量が上がっているのは、いわゆる「新しい生活様式」により、国民の在宅時間が増えたためです。
急速に拡大したテレワークで仕事をする人や、休日を家で過ごす人が増え、家庭用電力のエネルギー消費量が増加したものとみられています。

日本政府の掲げる温室効果ガス削減目標

温室効果ガスの削減は、世界各国が取り組んでいる課題です。その削減目標は、2016年に採択された「パリ協定」に基づいて決められています。世界全体の共通目標として、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」を掲げています。
日本は2050年のカーボンニュートラル(CO2排出量と吸収量を等しくさせ、実質排出量をゼロにすること)を目標に掲げています。その前段階として、2030年度に2013年度比で46%の削減を目指しているのです。
2020年度の温室効果ガスの総排出量(排出・吸収量の合算)は2013年度比で21.5%減となり、残り10年で約25%の削減が迫られています。

これから更に温室効果ガスを削減していくには

ここまで、温室効果ガスの現象や目指すべき目標について解説していきました。
2020年度はエネルギー消費量が大幅に下がりましたが、それは新型コロナウイルスというイレギュラーがあったという要因が強いです。長期的な目で見ると、エネルギー分野における新型コロナウイルスの影響は、あくまで一時的なものと考えられます。
ここでは、今後私たちは温室効果ガスを減らしていくために、どのような取り組みをしていけばいいかを、ポイント別に解説していきます。

エコ家電の導入をし、節電する

エアコンやテレビ、洗濯機や掃除機、冷蔵庫など、家庭に欠かせない家電には省エネ家電も数多く販売されています。ここ10年でも、省エネ性能は飛躍的に向上しているため、古い家電は思い切って買い替えてしまうのもよいでしょう。
また、買い替えだけでなく、使用方法を見直し、節電を心がけるのも電力消費量を抑え、温室効果ガスの排出削減につながります。
エアコンは適切な温度に設定し、こまめにフィルターを掃除することで運転効率がグッと上がります。
他にもテレビは画面の明るさを少し下げたり、冷蔵庫は物を詰め込みすぎず、古くなった食品はこまめに処分するなどの工夫が有効です。

水の使い方を見直す

節水と電力消費量は、一見するとあまり関係ないように見えるかもしれません。
しかし、水道水を家庭に届けるためには川やダムなどから水をくみ上げ、浄水場によって綺麗にされます。その工程には、膨大な電力が使用されるのです。
例えば、トイレを流すときの「大・小」をきちんと使い分けると、1回あたり最大2リットルの節水になります。4人家族の場合、1カ月で約720リットルの節水となり、およそ0.7kWhの節電に繋がります。これは、毎日約1時間テレビをつけっぱなしにしているのと、同じくらいの電力です。
こういった節水による節電は、住宅の電気料金などに反映される電力ではありません。しかし、水資源を大切にすると同時に、社会全体の電力消費量を減らすという、大切な取り組みになります。

移動手段の見直しをする

自動車は、ガソリンを燃焼させることで動き、たくさんの二酸化炭素を排出します。走行中だけでなく、エンジンが稼働している時は常に二酸化炭素が排出されているというのは、意外に知らない人も多いのではないでしょうか。
近年はアイドリングストップも推奨されていますが、使い方を間違えると渋滞のもととなり、結果的に多くの車から長時間二酸化炭素が排出される結果となってしまいます。
そのため、移動手段はなるべく公共交通機関を利用することで、温室効果ガス削減に大きく貢献することができます。また、近場であれば歩きや自転車で移動するなども非常に有効な手段です。

ゴミを減らす

ゴミの中でもレジ袋は、生産する時もゴミとして処理する時にも大量の二酸化炭素が排出されます。近年はレジ袋有料化により、マイバッグ・エコバッグが浸透してきましたが、「利用しない」、「そもそも生産させない」という取り組みが大切になります。 しかし、製造過程でCO2排出量が石油産業に次いで多いと報告されているのが、意外にも衣服などの繊維産業です。
それらは、衣服を製造するアジア諸国から排出されており、石油・天然ガスを利用して発電した電力を利用しているというデータがあります。
そのため、ファッション業界では製造過程を発表し透明化したり、化学繊維であるポリエステルのリサイクルに乗り出す企業も出てきているのです。
私たち消費者ができることもあります。「無駄な服は買わない」、「まだ着れる服はリサイクルに回す」、「環境に配慮している企業から服を買う」などの行動で、確実に温室効果ガスの削減に貢献できるのです。

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