東京都が太陽光パネル設置義務化へ!これからどうなる?

東京都が太陽光パネル設置義務化へ

2022年9月9日、小池都知事は新築住宅に対する太陽光発電設備の設置義務化を目指す基本方針を表明しました。
この「設置義務」はビルを含めたすべての新築の建物に該当します。しかし、この制度は個人ではなく、年間2万平方メートル以上の建物(住宅・ビル)を建築する約50社の大手住宅メーカーなど、事業者に対して課せられる義務です。都内で建設される年間新築棟数の約半数が該当する計算になります。
また、都内では地域ごとに日照量が大きく異なるため、メーカーが建てる棟数のうち、地域によりパネルの設置率を決定するという仕組みです。高層ビルの多い中央区や千代田区は30%、住宅地が多い目黒区や世田谷区は85%、また、屋根の面積が一定規模未満の住宅は設置義務の対象外となります。義務化がスタートした場合、未達成の事業者には指導が入り、それでも改善されない場合は社名を公表するなどの措置が取られます。
太陽光パネルの設置義務化は、これまで国でも議論を進めていました。しかし、義務化に向けた法律の制定は、経済産業省・環境省・国土交通省の3省にまたぐ案件のため、議論は停滞していたのが実情です。
最終的に、国は「2030年までに新築戸建て住宅の60%に太陽光パネルを導入することを目指す」という方向性が示されるにとどまりました。そこに東京都が、いち早く「2025年に義務化」を決めたことで国をリードした形です。
広い土地が少ない、太陽光パネルの設置にあまり適さない――そんな東京都が率先して義務化に踏み切った意義は大きく、群馬県でも2023年以降、神奈川県の川崎市も2024年以降に一定条件下での太陽光パネルの設置義務の施行を目指すなど、他の自治体にも強く影響を及ぼしています。

太陽光パネル設置の義務化が必要なわけ

太陽光パネルの設置を都が義務付ける理由の一つは、「脱炭素社会」に向けた温室効果ガスの削減のためです。
日本のエネルギー資源は石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に大きく依存しており、燃料の多くは海外からの輸入でまかなわれています。
東京都は、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する「カーボンハーフ」を表明しています。と同時に、都内のCO2排出量の約7割が、住宅や企業のビルなどの建物でのエネルギー使用が起因となっていることを受け、エコな再生可能エネルギーの普及に尽力しているのです。
東日本大震災以降、再生可能エネルギーの中でも太陽光パネルは特に注目を集めました。総務省統計局の発表(※1)によると、補助金制度の整備や技術の発展によって、2008年から2013年にかけて、「太陽光を利用した発電機器あり」の住宅は約3倍にも増えています。
しかし、太陽光発電協会(JPEA)の調査(※2)によると、2019年時点では住宅用太陽光パネルの導入率は僅か9%にとどまり、年々その勢いは衰えているのです。
こうした現状を鑑みて、国も太陽光パネル設置の義務化を検討していましたが、前述のとおり、都が一歩先に義務化に踏み切った形になります。

※1…参照:総務省統計局 「3 省エネルギー設備等の住宅への普及について」

※2…参照:JPEA 太陽光発電の状況 P4

太陽光パネル設置義務化によって起こると予想される問題点

太陽光パネルの設置義務化は、国際的な脱炭素化の流れを受け、日本も先進国として取り組まなくてはならない課題ではあります。しかし、私たちの生活に大きくかかわる分、事前に問題点を把握しておくことが大切です。
ここでは、太陽光パネル設置義務化によって、予想される問題点について解説していきます。

住宅価格の高騰

一番大きいのは、やはりコストの問題です。
これまでの住宅価格に、太陽光パネルの設置費用が上乗せされるため、全体的な住宅価格や上昇する見込みです。
太陽光パネルの設置が普及しだした10年前に比べると、おおよそ半分ほどのコストではありますが、住宅購入時に考えるコストとしては、無視できないものです。

※参照:太陽光発電について – 経済産業省 P52

定期メンテナンスの費用がかかる

どんな住宅設備にも言えることですが、太陽光パネルも「設置したら終了」ではありません。太陽光パネルは2017年4月の「改正FIT法」により、定期的なメンテナンスが義務化されています。これは発電効率の維持や、安全性の確保などを目的とするもので、点検のレポートは保管し、行政から求められた場合は提出しなければなりません。
気になるメンテナンス費用ですが、経済産業省のデータによると(※)、およそ4年に一度の定期メンテナンスで平均約数万円程度のコストがかかります。また、ソーラーパネルで発電した電力を家庭用に変換する「パワーコンディショナ」に関しては、おおよそ10年以降に一度交換が必要とされています。こちらの交換費用は現在で平均20万円程度とのことです。
ただし、今後太陽光発電の普及が進むと、メンテナンス費用は低下していく見込みです。また、メーカーによっては10年~15年程度の保証がついておりますので、これから設置される方はそこまで気にする必要はないでしょう。

※参照:経済産業省・電源種別(太陽光発電・風力) のコスト動向等について

日当たりのよくない家は資産価値が下がる可能性も

太陽光パネルは、基本的に日当たりの良い南向きの屋根に設置しなければ発電効率が悪く、意味がありません。
東京都の太陽光発電に関するHPによると(※)、太陽光パネルの設置は「日照などの立地条件や、住宅の形状等を踏まえて判断する」とのことです。しかし、設置の義務化が進むことで日照量によって発電量に差が出るため、住宅価格や資産価値に格差が生まれてしまう可能性があります。

※参照:太陽光発電設置 「解体新書」・Q&A

注文住宅を購入する際の選択肢が増える

今回の義務化は、あくまでもハウスメーカーやデベロッパーなどの事業主に課せられるものです。しかし、注文住宅で施主の立場になる場合は、事業者からの説明や東京都の配慮指針に基づいて、環境負荷低減に努めるという立場で、住宅の設計を判断する必要があります。
要は、事業者側と「太陽光パネルを設置するか、しないか」を相談し、決断する必要があるのです。
注文住宅は、ただでさえ決めることが多く、選択の連続です。その中で決して少なくないコストをかけなければならない「太陽光パネル設置」について、メーカーの比較などを含めた様々なことを決めなければなりません。
選択肢の幅が広がるという見方もできますが、非常に頭を悩ませる選択が増えるということでもあります。

売電する場合は確定申告や住民税の申告が必要なケースも

近年は国が副業を奨励しており、会社員などの本業の収入以外の副業収入を得ている人も増えています。そして、副業の利益が年間20万円を超えていなければ確定申告は不要だということは、割と知られているルールです。
しかし、太陽光パネルを設置し売電収入を得た場合、その金額が「年間20万円」の中に含まれてしまいます。
平均的な数字を考えると、例えば6kW分のパネルを設置しても年間で20万円の売電収入を得ることはまずありません。しかし、副業をしている人は売電収入も含めた確定申告をしないと、罰金が科せられることもあるのです。
また、確定申告が不要なケースでも、住民税などの申告は必要になります。太陽光パネルを導入した際は必ず市区町村に確認し、手続きをしましょう。

太陽光義務化によるメリットもたくさんあります

ここまで、太陽光パネル設置義務化による問題点を挙げていきました。事業者による義務化とはいえ、私たちの生活から切り離せない問題です。
とはいえ、太陽光パネル設置によるメリットも少なくありません。ここでは、太陽光パネル設置義務化によるメリットを挙げていきます。

電気代を節約できる

一番のメリットは、日々の電気代を節約できることです。
前述のとおり、日本のエネルギー資源は石油・石炭などの化学燃料を海外からの輸入でまかなっているのが現状です。世界的なエネルギー資源の枯渇や、海外情勢の変化などにより、年々電気代は高騰しています。
そのため、設置条件さえよければ太陽光発電による電力で、日々の電気をまかなえるのが最大のメリットです。
さらには蓄電池の導入により、昼間のうちに充電して、夜にお風呂を沸かすエネルギーにするなど、柔軟な使い方も可能です。

災害時の生命線となる電力の確保ができる

近年、日本各地で地震や水害などの災害が多く発生しています。電気や水道などのライフラインが止まってしまうことも少なくありません。
太陽光パネルを設置していれば、太陽電池モジュールや分電盤が無事であれば、停電の際も自家発電することが可能です。
また、太陽光と合わせて蓄電池を導入することで夜に停電が起きても溜めた電気を家庭で使用することが出来ます。

電気自動車(EV)にも使用できる

電気代と同様に高騰しているのが、ガソリンの価格です。2021年初頭にはレギュラーで140円弱だったガソリン価格が、2022年初頭には170円台にまで上昇し、10月時点も160円台を維持しています。
電気自動車は、専用の設備を導入すれば太陽光パネルで発電した電気を充電することができます。
アウトドア派の人であれば、思い切って太陽光パネルと同時に自動車も切り替え、ガソリン代なしでドライブを楽しむのも良いでしょう。
また、EV購入にも様々な補助金や免税制度があるため、興味のある方は調べてみることをおすすめします。

太陽光補助金について

住宅における太陽光パネル設置には、もともと補助金制度があります。それが「ZEH支援事業」です。「ZEH」はネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、省エネ設備を導入し、エネルギー収支がおおむねゼロになる住宅のことです。
太陽光パネルだけでなく、断熱性能の高い建具を使用したり、燃費の良い住宅設備を揃えるなどして、従来より20%以上電力使用量を抑えます。
戸建て住宅を新築または購入する個人に対し、下記の条件(※)を満たすと補助金が出るという仕組みです。
(1) ZEHロードマップにおける「ZEHの定義」を満たしていること
(2) SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(設計、建築又は販売)する住宅であること
2022年度の場合、条件に当てはまれば55万円の補助金が支給されることもあります。
さらに東京都は、太陽光パネル設置義務化に向けて、さらに補助施策も拡充していくとのことです。
また、東京都以外でも、補助金が出ている自治体はございます。
新築時の設置だけでなく、後付けで設置される場合でも補助金が出るケースもありますので設置の際は一度確認してみましょう。

※参照:2022年の経済産業省と環境省のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金について

まとめ

ここまで、太陽光パネルの設置義務化についてあらゆる角度から解説してきました。
先々の電気代などを考えると、決して太陽光パネルの設置義務が悪いだけの話ではありません。しかし、義務化する前よりも住宅価格が高騰してしまうことは明らかです。 予算に余裕があれば補助金を活用し、太陽光パネルの設置も含め、じっくりと考えるのも良いでしょう。しかし、予算が限られている場合は、義務化になる前に住宅を購入してしまった方がいいかもしれません。
「東京都にマイホームを持ちたい」という夢をお持ちの方は少なくありません。後悔しないよう、本記事の内容を参考にしていただけたら幸いです。

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